医療関係者向け情報

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羊水αフェトプロテイン
および羊水アセチルコリンエステラーゼ

羊水αフェトプロテイン検査(以下AFP検査)と羊水アセチルコリンエステラーゼ検査(以下、AChE検査)は、いずれも胎児が開放性神経管奇形である可能性を確認する検査です。AChE検査は、AFP検査に追加することができます。

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検査の目的

AFP検査では、羊水中に含まれるα-フェトプロテイン(AFP)を測定します。AFP検査のみを実施した場合の開放性神経管奇形の検出率は96%です1) 。AChE検査は、羊水中に含まれるAChEを測定する検査です。AFP検査にAChE検査を併せて実施した場合の検出率は、99%以上です2) 。 米国臨床遺伝専門医学会(ACMG:American College of Medical Genetics)によると、AFP検査およびAChE検査は、超音波検査と組み合わせることにより、胎児の開放性神経管奇形の診断なります3)

対象となる疾患(例)

  • 開放性神経管奇形(無脳症や開放性二分脊椎)
  • その他の胎児異常(臍帯ヘルニアや腹壁破裂など)

検査可能時期

  • 【AFP検査】 妊娠14週0日から妊娠23週6日まで
  • 【AChE検査】 妊娠10週0日から分娩まで
  • 妊娠14週未満または妊娠24週以降の場合、AFP検査とAChE検査の同時依頼のみ受託可能です。

適応例

  • 母体血清マーカー検査で開放性神経管奇形がスクリーニング陽性であった場合
  • 超音波検査で開放性神経管奇形が疑われる場合
  • 開放性神経管奇形に罹患している児を妊娠、分娩した既往を有する場合

AFP検査とは

羊水中に含まれるαフェトプロテイン(AFP)を測定し、胎児が開放性神経管奇形である可能性を確認する検査です。

AFPとは

AFPは、胎児肝臓で生成される血清蛋白です。胎児を循環しているAFPは、胎児の腎臓から濾過された尿中に失われるため、羊水中にはAFPが存在します。胎児が開放性神経管奇形や臍帯ヘルニア、腹壁破裂などの疾患に罹患している場合は、羊水AFP濃度が上昇します。

検査方法

化学発光酵素免疫測定法 (CLEIA: Chemiliminescent Enzyme Immunoassay)
CLEIAは、ビーズを固相とした2ステップサンドウィッチ法で、固相化抗体―測定対象物質-酵素標識抗体複合体を形成させます。複合体に基質を加えると酵素により加水分解され発光します。この発光量を測定して検体中のAFP濃度を求めます。

測定結果の判定方法
  • 【MoM値の算出】 AFPの測定データから妊娠週数毎の中央値を求めます。妊娠週数毎の中央値を求めるために、14週から23週までの妊娠週数毎の中央値を求め回帰曲線を作成します。この回帰曲線から、AFPの妊娠週数毎の中央値を求めます。回帰曲線から求めた妊娠週数の中央値で測定値を割ることにより、MoM(Multiple of Median)値を求めます。MoM値は測定値が中央値の何倍であるかを示します。
  • 【結果の判定】 ACMGの勧告では、「AFP検査の異常結果は通常2.00MoM以上」と定義されます3) 。弊社では、AFPが2.0MoM以上の場合には、ご依頼の有無にかかわらずAChEを無償で測定・報告します。
  • 【結果の報告】 被検者の測定値およびMoM値と、被検者の妊娠週数における2.00MoMのAFP値(上限基準値)を報告します。
日本人の基準値を使用

被検者が日本人の場合には、弊社では人種差を考慮して日本人妊婦の基準値(中央値)を使用してMoM値を算出します4)

AChE検査とは

羊水中に含まれるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を測定します。AFPが2.0MoM以上の場合に、同じ検体中に含まれるAChEを測定することで、偽陽性率を減らすことができます1) 。AFPが2.0MoM以上となる検体は約5%です1) 。AChE検査は、AFP検査を実施する場合にのみ追加できる検査です。

AChEとは

AChEは神経組織に存在する酵素で、胎児の脳脊髄中に高濃度に存在します。胎児に開放性神経管奇形があると羊水中にAChEが検出されます。本検査は、開放性神経管奇形以外の胎児異常の鑑別にも有用です。胎児腹壁破裂では羊水中にAChEが検出されますが、臍帯ヘルニアの場合には検出されません3)

検査方法

ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (PAGE: Poly Acrylamide Gel Electrophoresis)
AChEと偽性コリンエステラーゼ(PChE)は、銅イオン存在下では基質(ヨウ化アセチルチオコリン)とインキュベートすることにより白色の沈殿物となり、これによりバンドとして目視可能となります。

結果の判定

電気泳動の以下のバンドパターンに基づき、陽性/陰性を報告します。報告に際しては、AFP検査の結果や超音波検査所見と併せて検討します。

  • 【陽性】 PChEおよびAChEバンドが認められる場合
  • 【陰性】 PChEバンドのみが認められる場合
AFP検査が異常結果の場合

AFPが2.0MoM以上の場合には、弊社ではご依頼の有無にかかわらずAChEを無償で測定・報告します。

留意事項

胎児血液が混入している場合には、AFP高値、AChEが偽陽性となることがあります3)1)

検体受託要項

検査項目名 羊水αフェトプロテイン検査
羊水アセチルコリンエステラーゼ検査
検体必要量 羊水2ml以上
・AChE検査には、AFP検査と同一の検体を使用します。
・羊水染色体分析も実施する場合には、羊水20mlを羊水専用滅菌容器でご提出ください。
採取容器 弊社指定の血清専用分注容器
検体の採取条件 母体細胞の混入を防ぐため、羊水穿刺後の1~2mlは破棄してください。
保存温度 冷蔵
所要日数 5日(ラボコープ・ジャパン受託日より起算)
備考

・妊娠14週未満24週以降の羊水AFP検査では、測定値をMoM値に変換するために必要な中央値のデータがないため受託できません。AChE検査を同時依頼いただく場合のみ、羊水AFPの実測値をAChE検査の判定結果とともに報告します。
・本検査は、Laboratory Corporation of America®Holdings の子会社である
Esoterix Genetic Laboratories, LLC (米国)で実施します。
・検査実施料/判断料は保険未収載です。

参考文献
  1. Wald N, et al. Amniotic fluid acetylcholinesterase measurement in the prenatal diagnosis of open neural tube defects.
    Second report of the Collaborative Acetylcholinesterase Study. Prenat Diagn. 1989;9:813-829
  2. Milunsky A, ed. Genetic disorders and the fetus: diagnosis, prevention, and teratment, 5th ed. Baltimore, MD: Johns Hopkins University Press, 2004.
  3. Brad